「the能ドットコム」を始めることになった背景
2004年頃のことです。ある著名な能楽師との出会いから、「能楽の世界」に接する機会を得ました。その能楽師の軽妙な語りを通して知ることになった「能楽の世界」は、とても魅力溢れるものでした。
それまで全く未知の世界であった「能楽」との、新鮮な出会いの連続に、わくわくと胸を躍らせたものです。当時、もっと「能楽」について知りたいとの思いから、インターネットで情報収集を試みてみましたが、直面したのは纏った情報が殆ど無いという現実でした。
日本の古典芸能である「能」は、世界無形文化遺産の第一号として登録された、日本が誇る至極の芸術といえます。にもかかわらず、インターネット上にある「能楽」に関連する情報は、世界遺産を支えるには決して十分な内容ではありませんでした。むしろ、極めて貧弱なものでした。
何かが足りない状態は、同時に新たな機会の存在を意味しています。シェークスピアが出現する200年も前に生を受けた「世阿弥」が、こんなにも素晴らしい舞台芸術を完成させたことだけでも世界に誇り、伝えたくなるものですが、「風姿花伝」にまとめ上げられた芸術論の完成度の高さをも、もっと世界の多くの人々に知ってもらいたい、と強く思うに至りました。
日本語のみならず英語を含む外国語により、日本が誇る古典芸能「能楽」に関連する情報を的確に世界へ発信することが可能になれば、世界の各地から新たな興味と洞察が寄せられ、それが日本国内での新たな観衆を獲得することに繋がってゆくと確信を持つに至りました。
こうした思いから2005年に「能楽」サイト開設にむけた活動を開始しました。この準備期間中に、幸運にも素晴らしい「カリバー」達と出会うことが出来ました。現在の編集スタッフ達とサイト構築に長けた技術リーダーです。
素人だからこそ出来ることもあります。仲間である偉才達の手により2007年7月20日には、能楽情報ポータルサイト「the能ドットコム」を世に送り出すことが出来ました。当初は謡曲9曲からのスタートでしたが、着実なペースで新曲や、特集記事など掲載することが出来ているのは、「カリバー」達のお陰だと感謝しています。
現在進行する次なるステップは、当社の能力を超えて、この「能楽」サイトを更に発展させてゆく仕組みを構築してゆくことです。幸いにも、日本が誇る古典芸能「能楽」の魅力を効果的に世界へ発信し、文化基盤を発展させてゆくという主旨に賛同する仲間が出現しており、善意の輪が早いスピードで形成されつつあります。
サイトへの思いを共有しその発展を支える企業や、個人の協賛者による篤い志が、「能楽」サイトの発展基盤を醸成しつつあります。揺ぎ無い善意の力は何事をも可能にする心強いもの。畏敬の念と共に、感謝の気持ちでいっぱいです。